生活習慣の改善で血液を健康に

いきいき免疫力を高めるためのポイント

いなば院長からの医療コラムです。(2017年2月20日)

いきいき免疫力を高めるためのポイント

免疫力を高めるためのポイント季節流行性インフルエンザ、感染性胃腸炎、風邪、溶連菌感染症、また、一年を通して気を付けないとならない肺炎など、私たちの体力、抵抗力、つまり免疫力が低下すると、これらの疾患に罹患しやすいのです。「自然治癒力」ともいえる免疫力の低下は、生活習慣病やがんにも罹患しやすくなります。今回は、「体力を保持するための免疫力をどう向上させるか」についてそのポイントにつて考えてみましょう。

 

 

1. タバコを控える。(タバコは百害あって一利なし!)  
タバコは、免疫力を支える血液中のリンパ球やその司令塔であるマクロファージの活動能 力を低下させます。そのため、風邪を引きやすくなり、増悪する事もしばしばです。又、肺内マクロファージの活性低下は、肺がんを引き起こす誘因にもなります。 タバコを吸う煙(主流煙)より周りに漂う煙(副流煙)の方が、健康被害を及ぼす影響が大きいのです。

 

2. アルコールは適度に。(アルコールは、1日1合以内!)  
アルコールやその代謝産物は、免疫力を低下させます。常習飲酒者は発がん率が高く、 呼吸器感染率が高いといわれています。常習飲酒者から生まれた子供は長期間にわたり免疫系異常がみられ、そのため、いろいろなウイルスに感染しやすい事が分かってきました。

 

3. 質の良い睡眠をとる。(睡眠時間は、最低5時間以上!)  
睡眠の乱れは、免疫力を低下させます。快眠は大切ですが、たとえ心労があって眠れなくても、体を横にして休んでいるだけでも免疫力は高まります。20分の昼寝でも、免疫力は高まります。脳内メラトニンの作用は、有害物質である活性酸素を減少させます。これにより免疫力は高まります。20分の昼寝は、60分の睡眠に相当します。

 

4. 適度な運動。(有酸素運動を、継続しましょう!1日30分の速歩を!)  
外敵・ウイルスから身を守る免疫細胞(NK細胞)は、適度な運動によって活性化されます。「速歩」等の軽めの有酸素運動の継続が、免疫力を高めます。骨粗鬆症・がん予防にも有用です。 *NK細胞とは、ナチュラル・キラー細胞の略で、外敵を攻撃して身体を守る細胞です。免疫力を担う、大切なリンパ球の一つです。

 

5.笑う。(笑うかどには、福来たる!)  
笑うとNK細胞が、活性化され、免疫力が高まります。笑いによる脳への刺激が、神経ペプチド(免疫機能活性ホルモン)の分泌を促し、NK細胞はさらに活性化され、ウイルスやがん細胞にも立ち向かっていくのです。笑いは、その他、自律神経のバランス保持にも貢献します。笑いを、リウマチやガン患者さんの補助治療に取り入れている病院もあります。まさに、絶えず前向き志向が免疫力をアップさせるのです!

 

6. 充分な休養でストレス回避。
 「笑い」(快・充足)が免疫力を活性化させ、「ストレス」(不快・不充分)が逆に免疫力を低下させます。満足度が高ければ、脳内セロトニン・ドーパミン・βエンドルフィン等が高まり免疫力が上昇します。逆に、不満足だと、コルチゾール等が上昇して、血圧上昇、糖尿病の悪化、免疫細胞活性低下になります。ストレスに負けないためには、「適切な休養」「積極的な休養」が大切です。「休養」には「休む」と「養う」の2つの意味があります。仕事の後や休日には体を休めることが大事ですが、趣味・旅行・スポーツ・家族の団らん・友人との付き合い等、「自分で養う」事も大切。これが積極的休養で、ストレス発散に役立ちます。

 

7. 体温を下げない。  
平均体温が1°C下がると免疫力は37%下がり、1°C上がると免疫力は60%活性化される。体温は免疫力を大きく左右します。風邪を引いた時、熱が上がるのも免疫力を上げるための生体防御反応です。IL-1(インターリュウキン1)の作用なのです。体温を下げない工夫が必要です。冬季ならば、マフラー・レッグウオーマー・手袋等の着用。夏季ならば、クーラーによる冷え過ぎ等に注意をお願いします。

 

8. 日常の飲料水に気をつける。  
人体の60~75%は、体液成分です。適度な水分の摂取は、免疫力を高め、生活習慣病予防にもつながります。運動後はもちろんの事、発熱、下痢、等、脱水時には、必ずこまめに水分補給をしましょう。これは、心筋梗塞・脳卒中予防にもつながります。

 

9.薬・抗生物質・サプリメントの過剰内服を避ける。
一人の患者さんに多くの科(内科・整形外科・外科・皮膚科・耳鼻科・眼科・心療内科・歯科等)から多くの内服薬が処方されるケースが、しばしば見受けられます。また、されに多くのサプリメントや栄養剤をご自分で購入されて内服されておられる方がおられます。これらの内服は、免疫細胞の活性化を妨げ、ひいては、薬害、副作用、薬剤耐性、を引き起こします。特に、不必要な抗生剤の長期内服は、免疫力を弱める結果につながります。サプリメントや他科から処方が出た場合は、必ず主治医にご相談下さい。

 

10.バランスの良い食事を心がける。  
栄養バランスの乱れが、免疫力を低下させます。バランスよく栄養を取りましょう。 偏った食生活を見直しましょう。免疫力を高める食事の工夫も必要です。ニンニク、ショウガ、ミョウガ、青ジソメニュー等、香味野菜や緑黄色野菜は免疫力を高めます。

 

11.免疫力を高める健康補助食品・漢方薬。―*必ず主治医にご相談されて下さい!  
がん、ウイルス等から身を守る、自然治癒力の一部が免疫力です。これらの、自然治癒力を高めるための、健康補助食品、漢方薬が知られています。

① 初乳:哺乳動物の母親が乳児に与える、初乳には、免疫細胞、免疫抗体、が多く含まれ 免疫増強効果があります。ライオンや森永から牛初乳製剤、ラクトフィリン飲料が販売されています。

② 亜鉛製剤:Zn(亜鉛)は生体内の200を超える生化学反応に関与しています。免疫機能の正常化に関与します。牡蠣(カキ)、その他のサプリメント、薬剤でもZnを含んだ胃薬(プロマックD)もあります。

③ 茸類:アガリスク、舞茸、椎茸、漢方では、冬虫夏草等の茸多糖体類には、ベータグルカンの作用の免疫能の活性化と、抗がん作用、等の有効性が確認されています。

④ アロエに含まれるエースマンナンは、ベータグルカンとの併用により相乗効果を生み 免疫賦活作用を増強します。

⑤ その他:免疫力を向上させるための保険適用の漢方薬もあります。体質にあった処方が必要です。必ず主治医にご相談の上、処方をお願いします。市販の生姜湯でもOKです。

処方例:
1) 当帰四逆加呉茱茰生姜湯:四肢の冷え、腰痛、しもやけ、下腹部痛、頭痛。
2) 四物湯:虚弱体質、婦人科疾患、冷え症。
3) 人参養栄湯、補中益気湯:疲労倦怠、夏やせ、食欲不振、貧血、手足の冷え。

 

(日本血液学会指導医・専門医  稲葉 敏)

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