CKDは、成人の8人に1人と推計されています。
CKDの原因は、糖尿病、高血圧症、慢性腎炎などがあげられます。
また、腎臓の機能は、腎臓病がなくても加齢とともに低下していきます。つまり、加齢もCKDの危険因子なのです。しかし、昨今は、適切な早期の予防と治療を行うことで進行をかなり抑えることができるようになっています。
心血管疾患のリスクが高くなります!
腎臓の最大の役割は、血液中に含まれる老廃物や体に不要な水分や塩分をろ過し、尿に排泄することですが、実は、その他にも、血圧を調節する各種ホルモンや赤血球を作る造血因子(エリスロポイエチン)を分泌したり、カルシウム吸収を促進させ骨再生の為のビタミンDを活性化させる働きなど、私たちの生命を維持するうえで欠かせない、大切な役割を担っているのです。
この腎臓の働きに、少なくとも3カ月以上にわたって異常が認められるのが「慢性腎臓病(以下、CKD)」です。CKDは、慢性腎不全だけでなく、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクが高いことが分かっています。(心腎相関)
初期には、ほとんど自覚症状がなく、「むくみ」や「全身倦怠感」、「食欲不振」、「貧血」や「吐き気」などの症状を呈するようになった時は、病状がかなり進行していることが多いのです。CKDの原因疾患としては、高血圧症が原因の「腎硬化症」や糖尿病が原因の「糖尿病性腎症」や「慢性糸球体腎炎(IgA腎炎など)」等があります。
尿検査や血液検査で確認を!
尿は、腎臓の中の腎糸球体と呼ばれる場所で、血液中の老廃物等がこされています。
これら老廃物や余分な水分などは尿として排出されます。この尿を作る働きの目安が「糸球体ろ過量(GFR)」と呼ばれています。この数値は、加齢とともに少しずつ低下していきますが、CKDだと、そのスピードが速くなります。
正常に比べ、GFRが60%未満にまで腎機能が低下すると、末期腎不全や心血管疾患のリスクは高くなり、その働きが低いほど、リスクは高くなります。腎機能が低下してGFRが10%未満になると、透析の準備が必要です。健康診断などの尿検査で、タンパク尿や血尿が指摘された場合、放置することなく、早めに専門医の診断を受けてください。一般的には、血液検査で血液中の「Cr:クレアチニン」という老廃物の濃度で腎臓の働きを調べます。つまり、腎臓でろ過できなかった老廃物が血液中で上昇するのです。近年では、、多くの自治体や職域の特定健診で、検査項目となっています。特に、このクレアチニン濃度と年齢、性別を用いて計算される「推計GFR(e-GFR)」の数値と、タンパク尿の値で重症度を判定して、腎機能障害の程度をステージ化して、わかる様にしています。最近は、「わたしのe-GFRは、大丈夫でしょうか?」と聞いてこられる外来患者様が増えてきました!これは、健康食品や特定保健飲料や機能性食品など各種サプリメントなどによる「腎障害」などがCKDの危険因子や不安要因の一つにも含まれていることが、患者様の知識の中に定着されたためではないか!と思います。
予防には生活習慣の改善が大切!
「腎臓病のお薬が欲しい!」と、良く患者様に言われますが、現在の所、腎臓そのものを良くする明確な薬は、ごく一部しかありません。つまり治療の主な目的は症状の進行を食い止め、遅らせることにあります。早期発見により進行を遅らせるだけでなく、腎機能の改善が期待できることもあります。
CKDの原因はさまざまです。その原因となっている病気や生活習慣病の改善が必要です。 規則正しい生活を心掛け、適度な運動を行いましょう。LDLコレステロールや中性脂肪が高いとCKDを悪化させることが分かっています。腎機能に応じ、コレステロールや中性脂肪が高くならないようにしながら、適正なエネルギー摂取に努め、食塩は1日当たり6グラム未満を目標にします。また、アルコールの過剰摂取や禁煙も大切です。さらには、多くの解熱鎮痛剤などを含めた薬剤等も腎臓に悪影響を与える恐れがありますので、注意が必要です。高齢者の場合、比較的多く遭遇するのは、「腰」や「膝」の痛みで整形外科などから、痛み止め(消炎鎮痛剤)を毎日内服されている方の中に、下肢の浮腫・腎障害(CKD)が認められる方々がおられます。是非、ご注意を!
治療についてのご注意!
- ① 減塩食の勧め:
- 一日6g未満の食事!これは塩分を多く摂取する、私達、日本人にとっては「なかなか」難しいかもしれません!特に「高血圧」や「むくみ予防」のためにも、塩分は制限が必要です。「塩」・「味噌」・「醤油」などの三大悪玉「塩分」をなるべく少なく控えましょう。食卓でかけたり、つけたりする醤油やソース類をなるべく減らします。麺類は汁・スープを残します、汁物は「薄味」で一日1杯までに!漬物・佃煮・塩辛などの加工食品にも注意を!(減塩醬油を多くかければ、おなじこと!です。)
- ② 減塩の助っ人:
- 肉・魚介・キノコ・野菜など、「うまみ」の出る食品同士を組み合わせて調理しましょう!酢やレモン・ゆず・スダチなど酸味を加える、香辛料(カレー粉・とうがらし・柚子胡椒・ワサビ・からしなどスパイスはOKです!)や香味野菜(しそ・ショウガ・ネギ・にんにく、ハーブはOKです!)これらを駆使して「うまみ」・「香り」を生かすことで、薄味でも風味豊かに仕上げることで、満足感が上がりますね!
- ③ 薬物療法について:
- 薬物療法としては、高血圧症の方にはARBやACEといったレニン・アンジオテンシン系阻害薬を中心とした降圧薬で血圧を管理し、糖尿病の方にはSGLT2阻害薬やDPP-4阻害薬を中心とした薬剤で血糖値コントロールをめざします。特に、SGLT2阻害薬は「膵臓」を介さず「腎臓からの糖質を排泄」し、利尿効果にて血糖値を低下させ、CKDにも慢性心不全も改善させる効果があり、現在、保険適応にもなっており汎用されております!いずれにしても、かかり付け医や腎臓専門医にご相談いただき、患者様ご自身が前向きに治療に取り組むことが大切です。
定期的な検診を心掛けましょう!
高齢化が進むとともに、CKDの予備軍ともいわれる糖尿病や高血圧症や脂質異常症の人も増加しています。今後も、患者数はさらに増加していくものと考えられます。医療の進歩によって、CKDへの治療効果は高まってきています。そして、CKDから、さらに重症化リスクを減らして「透析」になる方を、少しでも減らし「健康寿命」を伸ばして、「いきいき健康な人生」を歩まれる事が喫緊の最重要課題です!そして、腎機能を守るために最も大切なことは、自覚症状がなくても、検診を積極的にお受けになり、早期発見・早期治療がなされる事です。今から、食事指導や運動療法など生活習慣病の改善に気をつけられて、「ちょっとした変化」を見落とさないよう、心掛けて参りましょう!
(いなば内科クリニック院長 稲葉 敏)