生活習慣の改善で血液を健康に

悪性リンパ腫について

いなば院長からの医療コラムです。(2021年3月23日)

非ホジキンリンパ腫が9割です。

 今回は、血液のがんの一種で、身体中のあらゆるリンパ腺にできる「悪性リンパ腫」について、解説致します。

 血液細胞は、白血球や赤血球、血小板などに分類され、それぞれが、さまざまな役割を担っています。このうち、主に体を守る免疫機能を担うのが白血球です。その白血球の一種である「リンパ球」が、がん化した病気を「悪性リンパ腫」といいます。
 2017年の推計によると、日本では年間3万人弱、人口10万人当たり20人程度が診断されています。高齢になるほど増えていきます。また女性よりも男性に多いのが特徴です。
 一部のタイプでは、ウイルスや細菌による感染症、などが関係していることが分かっていますが、ほとんどの場合、発症の原因は明らかではありません。
 がん化したリンパ球は、多くの場合、リンパ節で増殖して腫瘤(こぶ・しこり)を作るので、リンパ節の腫れが起こります。また、消化管や皮膚など、リンパ節以外の臓器(節外臓器)で腫瘤が作られたりすることもあるなど多様です。骨髄や血液にも病変が及ぶこともあります。
 実際には、悪性リンパ腫は、がん細胞の形態や性質によって70種類以上にも分類される病気の総称です。主に「非ホジキンリンパ腫」と「ホジキンリンパ腫」の二つに大別され、日本人では「非ホジキンリンパ腫」が9割以上を占めています。

 

腫れがあっても痛みはない(痛みが無いのが心配です!)

「白血病」とは、どんな病気? たいていの場合、首や脇の下、鼠径部(太ももの付け根)など、リンパ節の腫れやしこりで気が付くことが多いです。
扁桃炎や咽頭炎など、リンパ節が腫れることはよくあるでしょう。ただし大きさが2センチから3センチを超える場合は、悪性リンパ腫の可能性があり、大きいほど注意が必要です。また、リンパ節に腫れがあっても、扁桃炎や咽頭炎と異なり、痛みを感じないのが特徴です。
さらには、リンパ腫のタイプや腫瘍の広がり方によっては、38度以上の発熱、大量の寝汗、体重減少などの症状が現れることがあり、これらを「B症状」といいます。
 人間ドックなどの健康診断で受けた内視鏡検査や超音波検査、レントゲン検査などで見つかるケースも多いです。いずれにしても、リンパ節腫大の大きさが増大する場合や、数が増える場合には、注意が必要です。

 

生検などで病型・病期を確認

 悪性リンパ腫が疑われた場合、次のような診断や治療方針を決めるため、次のような検査が行われます。
 最も重要なのが病理検査で、病変組織の一部を切り取る「リンパ節生検」や「腫瘍生検」を行い、顕微鏡で調べます。そして、およそ70種類あるうちの、どのリンパ腫なのか病型を確認します。
 また、血液検査による全身状態の評価を行うとともに、超音波エコー検査、コンピューター断層撮影(CT)検査、陽電子放出断層撮影(PET)検査、磁気共鳴画像装置(MRI)検査などの画像検査で、腫瘍の位置や大きさなどを調べます。
 これらの結果をもとに、悪性度や病気の広がり、病期(ステージ)などが判断されます。病期は大きく四つに分類され、リンパ腫が1カ所もしくは、横隔膜を境とした上半身か下半身の片側に限られている限局期のⅠ・Ⅱ期と、横隔膜の両側にわたる複数のリンパ節にリンパ腫があるⅢ期、リンパ節以外の組織に広がっているⅣ期の進行期があります。

 

「薬物療法」が治療の中心

 最も患者数が多いのが、「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」です。これは急速進行性(アグレッシブ)リンパ腫の代表的なものです。
以降に、この治療について紹介します。中心となるのは「薬物療法」です。日本では、2001年にB細胞の表面にある「CD20」という分子を標的とする「リツキシマブ」が承認されたことで、治療効果が大きく向上。7~8割が寛解状態となり、うち2割程度に再発の可能性がありますが、約6割以上は治癒します。
 この「リツキシマブ」とともに、「シクロホスファミド」「ドキソルビシン」「ビンクリスチン」「プレドニゾロン」という薬剤を組み合わせて使用するのが標準的な治療で「R-CHOP療法」と呼ばれています。副作用として脱毛や手足の指先がしびれるといった末梢神経障害などがあります。また、抗がん剤により免疫担当細胞の正常な白血球が減少するので、免疫力が低下し、感染症のリスクが高まります。
 再発した場合などに大量の薬物療法などを行った後、骨髄機能を回復させるため「造血幹細胞移植」を行うことや、早期のステージであれば放射線治療を行うこともあります。

 

新たな薬剤も次々と誕生

 近年は、リンパ腫に対する新たな治療薬が次々と誕生してきています。それが、「ブレンツキシマブ ベドチン」というホジキンリンパ腫や未分化大細胞型リンパ腫の薬や、「イブルチニブ」という再発性・難治性マントル細胞リンパ腫に対する経口投与のBTK阻害剤(難治性Bリンパ腫に有効な抗がん剤の一種)です。
 さらには、「CAR-T療法」といって、自身のT細胞に人工的に遺伝子を加えてリンパ腫細胞への攻撃力を増強した免疫療法を使った治療法が、難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対して、近い将来認められると思います。
 いずれにせよ、医学の進歩により、悪性リンパ腫は、適切な治療によって健康な生活を取り戻せる可能性が高くなり、予後は改善しております。治療法も大きく進歩しております。決して心配せずに、気になる場合は、血液内科専門医の診断を受けてみてください。また、当院院長は血液学会専門医・指導医です。御心配な場合は、いつでも御遠慮無く、ご相談ください。(いなば内科クリニック院長 稲葉 敏)

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