健康診断の項目には必ず含まれている血液検査――でも、その結果を漫然と読み流してはいないでしょうか。中高年が気をつけなければいけない生活習慣病のサインは、血液の状態に顕著に表れるといいます。もし、その状態が少しずつ進んでいるとしたら、早めの対処が必要です。 血液からわかることは、みなさんがびっくりするほど多いのです。今回は、血液検査から見る中高年の健康について述べます。
血液検査結果のここに注目!
まず、血液検査の結果で特に注目するべき項目・数値と、数値が示す意味を述べます。
チェック1 高脂血症
項目:LDLコレステロール/HDLコレステロール/中性脂肪
この3つの数値から、「脂質代謝異常症」(いわゆる「高脂血症」)のリスクがわかります。高脂血症は動脈硬化を引き起こすため、改善が必要な病気です。
●LDLコレステロール
高いと注意!(140mg/dLを超えると注意)
通称「悪玉コレステロール」。身体に必要なコレステロールを運ぶ役割をしているが、余ると血管に残り壁にこびりついて血管を細くしてしまう。多すぎはNG。
●HDLコレステロール
低いと注意!(40mg/dLを下回ると注意)
通称「善玉コレステロール」。悪玉コレステロールを肝臓に運んで血管を掃除する役割を果たすため、多いほうが望ましい。
●中性脂肪(T-G/トリグリセライド)
高いと注意!(空腹時150mg/dLを超えると注意)
LDLコレステロール、HDLコレステロールの原材料。中性脂肪が多いとHDLコレステロールを減らしてしまう。また、肝臓についてしまうと脂肪肝になるため、多すぎはNG。
要チェック+α 血圧 |
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血液検査ではわかりませんが、血圧の高い状態が続く「高血圧症」も注意が必要です。高脂血症と結びつくことで動脈硬化の進行を促します。高血圧症は、日本人の約90%が本態性(家系的要素)で、そこに生活習慣の要因(運動不足・ストレスなど)が重なると発症します。検診の項目に必ず入っているので注目しましょう。 |
チェック2 高尿酸血症
項目:尿酸(UA)
この数値から、「高尿酸血症」のリスクがわかります。これは痛風の背景になる病気です。
●尿酸(UA)
高いと注意!(7.0mg/dLを超える場合、高尿酸血症です。8.0mg/dL以上は赤信号)
たんぱく質が燃えてできた老廃物。尿酸の結晶が関節などにたまると、激しい痛みを引き起こす炎症発作(いわゆる「痛風発作」)を起こす原因になるため、多すぎはNG。
チェック3 腎機能の低下
項目:尿素窒素(BUN)/クレアチニン(Cr)
上記の尿酸値と併せて腎機能の低下の有無がわかり、慢性的に腎臓の働きが悪くなる「慢性腎臓病(CKD)」の傾向を発見できます。CKDは腎臓の働きが悪くなるだけでなく、脳卒中や心筋梗塞、心不全のリスクを高くすることがわかっており、軽視できない項目です。
●尿素窒素(BUN)
高いと注意!(20mg/dL以下が理想)
●クレアチニン(Cr)
高いと注意!(男性1.04 mg/dL以下、女性0.79 mg/dL以下が目安・筋肉量の差で男女差があります)
尿酸も含め、腎臓がよく働けば濾過されて体外に排出される老廃物。腎機能が落ちると排出されないため、この数値が高いのはよくない兆候です。
要チェック+α e‐GFR |
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腎臓が体内の老廃物を濾過する力を表す値で、数値が高いほど濾過の力が高く良好なことを表します。CKDの進行度を示す「ステージ」は1~5まであり、ステージ5(GFR値15未満)になると人工透析が必要なケースが多いです。東京都23区など、自治体によっては特定健診の結果にも記載されています。 |
チェック4 糖尿病
項目:血糖/ヘモグロビンA1c(HbA1c)
この数値から「糖尿病」のリスクがわかります。
●血糖
高いと注意!(空腹時で109mg/dL以下が正常値)
検査を行ったのが空腹時か、食後かに注意する必要があります。
●ヘモグロビンA1c(HbA1c)
高いと注意!(5.8%以下が理想)
血糖は血中のブドウ糖、HbA1cは赤血球に結びついたブドウ糖のことをいいます。赤血球の寿命は28日であるため、HbA1cの値は過去約1か月間の血糖の推移を反映していることになります。血糖値が高い状態が続くと血管がダメージを受けてさまざまな合併症を引き起こす危険があるので、適正値にコントロールする必要があります。
以上のチェック項目を確認し、もし基準値からはずれているものがあれば、怖がらずにご相談ください。検査の基準値は“未病”の段階での予防を目指すためのもので、厳しめに設定されています。基準値はあくまで基準値ですので、もしはずれていても決して落ち込む必要はありません。