血液中の尿酸値が7.0mg/dlを超えている状態が、高尿酸血症です。これは、食事や飲酒、生活習慣のみだれや運動不足やストレスなどが原因とされ、自覚症状はなく、健康診断などで指摘されることが多いのです。
高尿酸血症の方の80%が、高血圧症、肥満、糖尿病、脂質代謝異常症などの何らかの生活習慣病を合併されていることが多く、脳梗塞や心筋梗塞、狭心症などの発症率を高めていることがあり、注意が必要なのです!
高尿酸血症のタイプについて
- ① 尿酸産生過剰型:尿酸の産生が多いタイプです。
- ② 尿酸排泄低下型:尿からの尿酸の排泄が少ないタイプです。
- ③ 腎外排泄低下型:尿酸の腸管からの排泄が少ないタイプです。尿酸は、腎臓だけでなく腸管から便にも排泄されます。
- ④ 混合型:これらが互いに混ざった混合型もあります。
この様に、それぞれのタイプにあった生活習慣の改善や、治療が必要になります!
プリン体と尿酸の関係について
「プリン体」は、食物全般に含まれており、また私たちの身体の中でも産生される物質です。この「プリン体」は、私たちの細胞の新陳代謝やエネルギー代謝に使われる大切な物質です。この「プリン体」が体内で分解されて生じる代謝産物が「尿酸」なのです。「尿酸」は主に尿に溶けて排泄されますが便や汗でも排泄されます。また、体内での量は「尿酸プール」として一定量に保たれています。これら産生と排泄のバランスが崩れると「尿酸プール」があふれて血中の尿酸値が高くなり「高尿酸血症」になるのです。
痛風と高尿酸血症の関係
高尿酸血症を放置していると、尿酸が結晶化して関節や様々な部位に溜ります。これを白血球が破壊しようとして炎症と激しい痛みが起こります。尿酸の結晶は、顕微鏡で見ると「針状結晶」の為、組織の破壊が強く、さらに局所の「痛み」と「腫れ」と「熱感や発赤」をともないます。まさに触れられると「痛みが増す!」ので「風でも痛む」と言われてきました。これらを、「痛風発作」「痛風関節炎」と呼びます。
痛風発作は、足の親指の付け根(第一関節)が発症しやすいですが、その他にも、足首・足の甲・膝・手首・肘・アキレス腱・手指の関節などにも発症します。痛風発作は約一週間程度で治まることが多いのですが、放置や再発を繰り返すと症状はますます増悪することが多くなり、関節の腫脹や変形などが起こるため、適切な治療が必要です。
高尿酸血症の治療について
高尿酸血症の治療では、血清尿酸値6.0mg/dl以下を目標に尿酸値を下げる治療を進めていきます。高血圧症・肥満などの生活習慣病の見直しが治療の柱ですが、患者さんの状況に応じた薬物療法を追加します。
- (1)薬物療法を行う場合:
- ① 痛風発作(痛風関節炎)あるいは痛風結節がある方
- ② 血清尿酸値が8.0mg/dl以上で腎障害のある方
- ③ 血清尿酸値が、9.0mg/dl以上の方
- →これらの方では
- 「目標となる血清尿酸値6.0mg/dl以下」です!
- 生活習慣の改善が困難で、薬物療法を行う場合には、尿酸産生を抑える「尿酸生成抑制剤」や、尿酸排泄を促す「尿酸排泄促進剤」などの「尿酸降下薬」の投与が必要です。また、体液や尿の酸性度をアルカリ性にして高尿酸血症の酸性尿の改善をはかる尿アルカリ化薬の内服も有効です。ただし、急激な血清尿酸値の低下は、かえって痛風発作を悪化させてしまう危険があります。治療に際しては、担当医と相談しながら、時間をかけて徐々に進めていきましょう!
- (2)食事療法について:
- ① 規則正しい食生活を:
- 栄養バランスの良い食事を心がけましょう!体重を適正化することで、尿酸値の低下が期待できます!
- また、砂糖や果糖の摂りすぎも尿酸値上昇につながります!
- ② プリン体を多く含む食品を控えましょう!
- 「プリン体の多く含まれる食品一覧例―」
- *1日あたりのプリン体摂取量は、400mg程度が推奨されています。下記は食品中100gあたりのプリン体含有量です。
- 1. きわめて多い食品:300mg~以上
- 鶏レバー、干物(マイワシ)、白子(イサキ、フグ、たら)、アンコウ(肝酒蒸し)、太刀魚、健康食品(ビール酵母、クロレラ、スピルリナ、ローヤルゼリー)特に、筋トレ後に多飲する、プロテイン製剤・プロテイン飲料にはご注意を!
- 2. 多い食品:200~300mg
- 豚レバー、牛レバー、カツオ、マイワシ、大正エビ、オキアミ、干物(マアジ、サンマ)、
- 3. 中程度の食品:100~200mg
- 肉(豚・羊・牛)類の多くの部分、ブロッコリースプラウト、ほうれん草(芽)、魚類など、明太子、スルメイカ、タコ等
- 4. 少ない食品:50~100mg
- ほうれん草の葉、カリフラワー、魚肉ソーセージなどの加工肉類等
- 5. 極めて少ない食品:50mg以下
- 野菜全般、米などの穀類、乳製品、豆類、キノコ類、豆腐、加工食品等
- *ただし、納豆等を大量に毎日、摂ると尿酸値は上昇します。高尿酸血症の方では、納豆は、週に一食~二食程度の控えめに!枝豆も同様です!ただし、同じ大豆食品でも豆腐はニガリを使用するので尿酸フリーで大丈夫です!
- ③ アルコールは控えめに!
- アルコールは、血液中の尿酸値を上昇させる作用があります!さらに、ビールにはプリン体が多く含まれます!飲酒は一日の目安(一合程度)を守り、休肝日を設けましょう!「ビ-ルに枝豆」は油断大敵です!今は、尿酸フリーのビールなどもあります!生活の智慧で「教養ある食生活を!」お願いいたします。
- ④ 水分補給をしっかり!
- 水分補給で尿酸は、尿からの排泄を促進できます。
- 特に暑い夏や、高温環境での職場等の脱水条件下では、水分補給をしないと「痛風発作」が誘発されることが多くなります。また、尿のアルカリ化により尿酸が溶けやすい状態になる事で、尿路結石の予防にもなります。成人では、1日2L以上の水や野菜や海藻類等を十分に摂りましょう!*高齢者や水分摂取に制限のある方は、主治医にご相談を!
- ① 規則正しい食生活を:
- (3)運動療法:
- 食事と共に運動療法も大切な生活習慣の改善の柱です。
- 激しい無酸素運動はかえって尿酸値を上昇させるため、ウォーキングなどの有酸素運動を無理のない範囲で行いましょう!
- *そのほかに、ストレス回避の為にリラックスできる時間を設ける事、そして、十分な質の良い睡眠をとることも大切です!
高尿酸血症の診断や治療については、皆様の生活習慣に寄り添った指導や薬物療法を行って参ります!どうぞ、当院に、お気軽にお申し付けください。(いなば内科クリニック院長 稲葉 敏)