これは、医学教育の礎をきづかれた、ウイリアム・オスラー先生の有名な言葉です!どんな人も老化は避けることはできません。また、平均寿命がどんなに伸びても、寝たきりだったり、介護を受ける事が多くなることは、誰しも避けたいものです!元気で生き生きと自分らしく自立した生活が送れる―理想的な「健康寿命」を伸ばしていくためには、どうしたらよいでしょうか!今回は、そのために最も大切な「フレイル予防」について考えて参ります。
「フレイル」て、そもそも「何なの?」-
「フレイルティ:frailty」―「弱る」「萎(な)える」「虚弱」などの言葉を意味します。これを和性・英語省略化して「フレイル」とした言葉です。つまり、高齢者に多い「心身の機能が衰えていく状態」を言います。元気に、歩けていた高齢者が、杖をつく様になり、さらには、シルバーカーを使うようになり、車イスに、そして、ついには要介護となり寝たきりになる。この一連の経過が「フレイル」なのです。できれば「元気なうち」に、さらには「要介護になる前段階」の「プレ・フレイル」の状態で、早めに生活習慣を見直せば、健康な状態にもどす事ができ「健康寿命」を伸ばすことが可能になります。そのポイントについて考えていきましょう!
「身体的フレイル:フィジカル・フレイル」予防―
歩行スピ-ドが以前より遅くなった。筋力低下で階段が登りにくくなった。ちょっとしたことで転びやすくなった。以前に比べて疲れやすくなった。これらは、身体的フレイルのあらわれです!
【予防のポイント】
バランス能力を付ける為の片足立ちや、下肢筋力をつける為のスクワットなどで、転倒・骨折を予防しましょう。先ずは、日常生活の中で、体を動かす時間を増やしましょう!体を動かす時間は、65歳以上で「毎日合計40分以上」が目標です!
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- ① 歩幅をやや広め(具体的には、握り拳一つ分程度多く)に、少し早めに歩く(無理のない様に!)
- ② 掃除・洗濯・料理は、キビキビとして!
- ③ 買い物は、歩いて少しだけ遠めのお店へ!
- ④ 公園や運動施設、スポーツイベントなどを利用する。
- ⑤ 80歳で20分間、キビキビ歩行出来たら最高です!
- ⑥ テレビ体操や町会ラジオ体操も継続する事で効果があります!(継続は「力」なり!)
「栄養・摂食障害フレイル:オーラル・フレイル」予防
高齢者が、「体重が低下する」「痩せてきた」「身長が年々、低下してきた(背が縮んできた!)」と、しばしば訴えられます。これは、老化に伴う、筋力の低下や骨粗鬆症などによる年々の骨萎縮の為です。先に述べた「運動」と共に「食生活」や「摂食・嚥下」の見直しが必要です!
【予防のポイント】
「ちょっとした時に、むせる!」「噛むことが苦手!」「堅いものが食べられない!」「呑みこむのが苦手!」など、気になることがありませんか!これは、オーラル・フレイルの始まりです!まずは、摂食障害や嚥下障害の予防には、定期的な歯科受診をお勧めいたします。口腔内の清潔を保つと共に、食べられる歯と口を維持しましょう!また、口の体操で喉や口周りの筋力や舌のトレーニングで舌圧を鍛えましょう。嚥下力(飲み込む力)が養われます!健康な歯と口で、栄養面では、高齢者ほど、積極的にタンパク質(肉・魚・卵・大豆食品)やビタミン(野菜や果物)を食べましょう!そして筋肉量を保持しましょう!
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- ① 一日3回の食事で、生活リズムを整えましょう!
- ② 和食・洋食・中華など、いろいろな料理をバランスよく食べましょう。
- ③ 油脂類は健康を保つ栄養素の一つです、一日一品は油を使った料理を!(ただし、摂り過ぎにはご注意を!)
- ④ 牛乳は1日200ml(コップ1杯)以上、とりましょう!カルシウムは骨粗鬆症予防に大切です。乳製品がにがてな方は、小魚・サクラエビ・シラス・小松菜・ひじき・がんもどきなどの大豆製品もお勧めです。
- ⑤ おやつの食べ過ぎで、大切な食事がおろそかにならないようにしましょう!おやつに偏った食生活に注意しましょう。
- ⑥ 旬の食材を取り入れましょう!季節感のある食材は栄養が豊富です。また、食欲も増すことができます!
- ⑦ 孤食を控えましょう!一人で食事を摂る(孤食)は、食欲も消化や吸収能力を低下させます。できる限り、家族や友人と共に、楽しい語らいの団らんの食事の機会を摂るように心がけを!
- ⑧ 口腔内清浄化や摂食嚥下障害予防に具体的方法については―葛飾区医師会が作成した「かつしか笑顔いきいきお口体操」の動画(YouTube)をご参照下さい!
「社会的フレイル:ソーシャル・フレイル」予防
核家族化や独居など孤立した生活環境、老・老介護、認・認介護、など超高齢社会の問題は、喫緊の課題です。特に、高齢者を取り巻く環境は、多くの難題もあり、高齢者に優しい生活環境・住まい・食事など生活相談や支援などの見守りが必要です。社会的にかかわることが面倒になり外出しなくなる。体を動かす機会が、めっきり減った。等、社会的フレイルは大きな問題です。65歳以上になると、多くの方が仕事を退職するなど、人と人との関わり合いが減り、極めて限られた人との関係になります。そのため外出や交流が減り社会的フレイルが起こるのです。これは、今まで述べてきた一般的なフレイルだけでなく、「脳のフレイル:ブレイン・フレイル」である「認知症」発症リスクにも相互に関連しています。
[予防のポイント]
まずは、自分が無理なく「やってみたいプラン」を立ててみましょう!他人や家族から「強制的に押し付けられた目標ではなく」、ご自分が「プランを作成して」ノートなどに記載してみましょう。そのために、応援して下さる方が必要ならばその人にも協力をお願いしてみましょう。自分で目標を立てる事が難し場合は、サポートして下さる、どなたかに、プラン・サポーター役になっていただき相談してみましょう。そして、目標を実現するための取り組みと、それぞれ獲得するまでの大まかな月日をご自分で決めて、その実行状況を、ノートに記載しながら、その実行度を「自己採点」してみてください。「満足できた」か、「まあまあ」か、「不満足」か程度で結構です。ひとつひとつの課題に向きあって、それぞれ「自己評価」していき、さらに、次の課題に挑戦していきましょう!獲得・目標課題が、多いほど「私のプラン」は、充実していきますね!つまり、社会や他人との関係性が広がることで「ソーシャル・フレイル」は解消されて関わり合いの中で、「自分を取り戻せる」のです。このことは、「自分だけでなく」関わり合いを持つ「他の人を含めた」ソーシャル・フレイル解消の相互作用を生むことになります。故事に「他人のために灯した明かりは、自分の足元も明るくする」との箴言の通りです!どうぞ、「フレイル予防」で、健康寿命を生き生きと!ご自身の人生を明るく、楽しく、自分らしく歩んで参りましょう!
(いなば内科クリニック院長 稲葉 敏)